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episode14:太陽が消えた日[03]

  1. 康文〈あれから7年。僕は、少しずつ静かに死んでいく母を見守ることしかできなかった〉孝弘「母親の過感知がわかったのは、あいつが小学4年生になった春のことだったらしい」「母親は毎年、春先から秋口まで体調を崩しがちで」
  2. 孝弘「ある日、康文が突然圭太さんに言ったらしい」康文(子供時代・回想)「おとうさん、たぶんあの匂いが悪いんだよ」「あの匂いがするといつも、おかあさんきもち悪くなるもん」圭太(回想)「………」「匂い……?」孝弘「って感じで、康文の非感知も同時に判明した」
  3. 孝弘「圭太さんがI.P.P.A.(イッパ)の研究員じゃなかったら、どっちもずっと先だったんだろうな」「母親が倒れた理由も分からずじまいだったかもしれない」「その頃はやっと感知器(センサー)が開発されたばかりで、今みたいに精度も高くないし、そこかしこに設置してなかった」「自己防衛するしかない時代だった」母親はISRP(イスルプ)の存在に怯えて、少しずつ不安定(ナーバス)になっていった」「唯一の救いは、非感知である康文の存在だった」
  4. 孝弘「圭太さんは当時、研究所(つくば)に単身赴任状態。週末しか帰って来れなくて、康文は学校以外はずっと母親のそばについてた」武士「………」孝弘「あの頃あいつ、宇宙とか星とか好きだったみたいなんだよなー」「実家の部屋にその系の本がいっぱいあってさ」[その日は新月][台風一過の雲ひとつない澄んだ夜]孝弘「天体望遠鏡を持ってる同級生に誘われたとかで」
  5. 綾音(回想)「大丈夫よ、心配しないで」「行きたいんでしょう?」孝弘「それで帰ってきたら、ISRP(イスルプ)に寄生された母親が倒れてた、と」
  6. 孝弘「たまたま康文が出掛けた夜に、たまたまISRP(イスルプ)が現れて、運悪く非感知の母親が寄生されてしまった」「偶然が重なった不幸な事故だよ」武士「………孝弘さん」「山口がI.P.P.A(ここ)で働くのって、お母さんの治療費を稼ぐためなんでしょうか?」孝弘「いやー?それは違うな」
  7. 孝弘「母親がいるのはI.P.P.A.(うち)の関連施設だし、それに…うん、そういう心配はしてないはずだ」武士「じゃあ………」「……………」「…山口が言ってました」「もしこのままお母さんが死んだら、自分が殺したも同然だ、って」
  8. 孝弘「そっかー…」圭太(回想)「いいか康文」「おまえのせいじゃないよ」「これは事故だ。運が悪かったんだ」孝弘「あの頃、散々言い聞かせたって、圭太さん言ってたけど」「あいつまだ、少しも納得してないんだな…」

武士は孝弘から母親が倒れた経緯を聞き、ますます複雑な気持ちになる。

以前から、身を削るかようにI.P.P.A.での業務を熱心にこなす康文を不思議に思っていた武士は、母親の治療費を得るためだったのではないかと考えるが、それは違うと孝弘は言い切る。それじゃあ、なぜ…?

その頃、康文は、母親の病室を前にして、後ろめたさから入室を躊躇っていた。

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